【開発者インタビュー】
私自身が実感!高齢になっても回復し、元気になれる!~イージ・ウォーク開発秘話~

株式会社テクノ・マイス
代表取締役会長 溝渕 定

1949年、浜松市の丸正自動車で、伝説の名車として今も名を残すオートバイ「ライラック」を開発。その後、ブリヂストンサイクル工業に入社。台湾に渡って同国のオートバイ産業の礎を築く。帰国後、浜松餃子ブームのきっかけとなる超小型餃子製造機を開発。2000年7月テクノ・マイス創立。現在に至る。

溝渕会長

座ったままでも歩けたら…と開発した「イージ・ウォーク」

使用者に感想を聞く溝渕会長
▲実際に使用している人の様子を見るため、溝渕会長は全国の施設や病院にも熱心に足を運んでいる。

私はオートバイをはじめとする様々な機械・機器の開発に携わってきましたが、そろそろ引退しようかと考えていた頃の事です。引退を決意したものの、まだまだ元気はいいし、根っからの技術者なのかアイデアはいくらでも溢れてくる。 ところが元気は良いのに足だけは弱くて、いつも手すりにつかまって歩くような状態で、どうにももどかしいのです。

そんな時にたまたま知り合ったお医者さまから 「足のむくみを解消する機械ができないか」と相談を受けたんです。座ったまま、足を載せるだけで「歩く」のと同じように足首の関節を動かし、血流をよくできるようになるモノ。これはひょっとして自分の足にも良いのではないかと開発したのが「イージ・ウォーク」でした。

試作段階から実際に自分で試していたのですが、毎日10分程足を載せるだけで足が軽くなっていくんです。しばらくして、手すりにつかまらなくても歩けるようになったので、これはいけると実感。 しかし、この時の私には「歩く」ことの本当の力には気づいていませんでした…。

モニターで得た効果に「歩くこと」の大切さを実感

実際に他の方にも試してもらおうと試作機を5台つくり、高齢者施設で80歳以上の方5人に試して頂いて数ヵ月後。「結構いい結果が出ました」という連絡を受け、私はその施設に訪ねて行きました。 そこでちょうど使用中の92歳の女性に出会い、「調子はいかがですか?」と尋ねたところ「お陰様で立てるようになりました」とおっしゃるんです。 血流が良くなることを目的に設計した機械でしたから、もうビックリしました(笑)

しかし、私以上に驚いていたのが彼女の担当医でした。
「この方は痴呆症で、いつもニコニコしているが、何を言っても返事をしたことがない。でも今返事しましたよね!!」と興奮気味におっしゃいました。身体機能が衰え、認知症になり、立つことさえできなくなっていた女性が、イージ・ウォークで足首を動かし筋肉に刺激を与えた結果「立つ」ことができるようになり「返事をすること」を思い出してくれてた!私はそのとき初めて「歩く」ことの本当の意味と大切さを知ったのです。

その後、医療機関での臨床試験でも血流効果があることが実証され、その結果は学会でも発表されました。現在では、全国4,000以上の病院や高齢者福祉施設などに導入され、ご愛用いただいています。

施設の職員の方から感想を伺うことがありますが、とても好評ご様子で本当に嬉しく思います。その証拠に施設のご利用者がご自宅で使うために個人的にご購入されるというケースがとても多くなってきています。

【ものづくりにかける(当時)83歳】
NHKで放送して頂きました!

高齢者でも安心・安全な本格的歩行マシン
「エルダーウォーク」

「イージ・ウォーク」ですっかり歩くのが楽になっていた私でしたが、87歳になったある日、突然動脈解離を発症。幸い10日間の安静治療で回復したものの、体力が急激に衰え、完全に歩行不可能となってしまいました。
そこで、家族やまわりの人手を借りず、自力でリハビリできないか?と考えて考案したのが、“歩けば動く、止まれば停まる”ウォーキングマシン「エルダーウォーク」です。

研究の過程でわかったことは、「歩くときの平衡感覚を保つために要する負担が、いかに大きいか」ということ。逆に言えば、ちょっとした支えがあり、高齢者に合ったスピードで歩行を促せば、足腰が弱っていても歩けるのです!

実際、毎日続けていくうちに徐々に脚力がつき、室内では普通に歩けるようになりました。半年後には台湾まで仕事の打合せに行くこともできたのです。

その後、階段を踏み外して尻もちをつき、圧迫骨折で腰痛・神経痛に悩まされましたが、後ろ歩き・横歩きが腰回りの筋肉を強化するのによいと知り、エルダーウォークで試してみたところ、結果は想像以上。長い距離を歩くのは無理ですが、腰はすっかり楽になりました。

上半身を強化する
「エルダックス」

こうして再び歩けるようになったものの、やはり歳のせいか、すぐに疲れが出るようになってしまいました。

「筋肉が衰えて血流が悪くなり、酸素と栄養の補給ができないからだ。インナーマッスルを鍛えなければ!」
そう考えた私が次ぎに考案したのが、体力・気力が減退した高齢者でも、楽に安心してインナーマッスルを鍛える運動マシン「エルダックス」です。

これは、簡単にいえば手でこぐエアロバイクのようなもの。ハンドルを握るだけでモーターの駆動で腕が前後に長い楕円を描きながら屈伸運動します(他動運動)。
また、「エルダックス」は他動運動と自動運動の両方ができるのが大きな特長のひとつです。ハンドルを押すように力を入れてこぐことで、上半身全体に「ひねり負荷」がかかり、大腰筋などのインナーマッスルに刺激を与え、鍛えることができます。

こうしたさまざまな経験を経て、90歳を過ぎても、運動によって老化現象をやわらげ、回復することを私自身実感しています。
年齢だからとあきらめないことが、何よりも大切なのです!
みなさん、どうぞあきらめず、何歳になっても自力で歩ける、元気に動ける身体を目指し、人生を楽しんでいきましょう!

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